三便宝 イカオウ 忍者ブログ

Windows XP

NINJA

顔をゆがめた

 ルーディはふうと細い吐息をもらし、カリーナに優しい眼差しを注ぐ。「たった一人、何よりも欲しい男が手に入らないなら、世界中のいい男をとりまきにし、世界一の男を手に入れる、とねえ。――くすっ。それは、欺瞞ですよ?」 にやりと、ルーディは意地悪く笑む。 瞬間、カリーナはかっと頬を赤くし、どんとルーディの胸を叩きつけるように押した。 悔しそうにルーディをにらみつける。「お前に、何がわかる」「少なくとも、姫がとっても素直でないということだけはわかりますよ」 胸をどんどんと打つカリーナの手を、ルーディはにやにや笑いながらがっちりつかみ、それ以上の攻撃をあっさり阻止する。 カリーナは悔しそうに舌打ちをした。「うるさい。知ったふうな口をきくのじゃない。……何もわからないくせに」 ふいっと顔をそらし、カリーナは苦しそうに顔をゆがめた。 きゅっと結ぶその唇が、小刻みに震えている。 何かを誤魔化すように、何かをこらえるように。何かに怯えているように。 ルーディは困ったように微苦笑を浮かべ、カリーナの肩を抱き寄せ、ぽんぽんと頭をなでる。「はいはい、カリーナ姫、あなたも報われない恋をしたものですねえ」 カリーナは頭をなでるルーディの手をぺしっと払いのけ、じろりとにらみつける。「お前は本当、抜け目がなくて嫌いだ」「それは光栄です」 ルーディは涼しい顔でにっこり笑った。 にらみつける目をふとやわらげ、カリーナはルーディの肩に頭をぽすっともたれかける。 うつろな目で、苦しげにぽつりつぶやく。「ルーディ、わたしは、いつまでこのままでいればいい?」 からかいがちにカリーナを見るルーディの顔が、ふと曇った。 そして、ふるっと首を一度横にふり、ぐいっとカリーナを抱き寄せ、その胸に抱きしめる。「……姫、お辛いでしょうが、ずっと……一生です。おわかりですよね? あなたのお立場、そして、カイの置かれている立場」 カリーナの耳に唇を寄せ、言い聞かせるようにルーディがささやいた。 ルーディの吐息で、カリーナの髪がさわりと揺れる。 カリーナは大きく体を震わせ、辛そうにこくんとうなずく。 悔しそうに、ルーディの胸に顔をおしあてる。 ルーディは、カリーナの頭をぽんぽんと優しくなでる。 愛しそうに、見守るように、カリーナを見つめながら。 覇王の妃などではなく、カリーナが本当に心から望むものは、抱く野望は――。 それは、決して叶わない。叶えるには、犠牲を払いすぎる。 そこまでの勇気は、そこまでのむちゃは、カリーナにだってできない。 だって、野望が叶うと同時に、全てを失うことになるから。 いちばん失いたくないそれを、悲惨なかたちで失うから。 王女とそれに仕える者が結ばれるなどは、決してあってはならないこと。 いちばん大切な人を守るためには、いちばん望むものを諦めねばならない。 それが、この国の王女に課せられた、定め――。
PR